「やる気が出ない」「期待して裏切られてばかり」「いつも全力で疲れてしまう」──そんな声がSNSでも多く見られるようになりました。
今、注目されているのは「人生のポートフォリオ設計」を“お金”ではなく“エネルギーと期待”の分散という視点から捉え直すこと。
「期待をかけすぎる対象」が自分のエネルギーをどう消耗しているかに気づき、メンタルのバランスを保ちながら持続可能な働き方・人間関係を築く「期待の分散設計」について解説します。
頑張りすぎてしまう人、つい一極集中してしまう人に向けて、自分を守るための知恵としてもらえれば幸いです。
エネルギーを賢く分散して、もっと生きやすく

「人生のポートフォリオを組もう」と聞くと、多くの人が「お金の話」「副業や投資の話」と受け取ります。しかし本質はそこではありません。
現代を生きる私たちにとってより重要なのは、「どこにどれだけ自分のエネルギーと期待をかけるか」を設計しなおすこと。つまり、“人生のエネルギー配分を最適化する”という視点です。
エネルギーといっても、単なる体力や時間のことだけではなく、「感情」「集中力」「注意」「思考体力」といった、目に見えないリソースをどう使うかが問われています。
現代の情報過多社会では、この“目に見えないリソース”がどんどん摩耗していきます。
たとえば、アメリカの心理学者ロイ・バウマイスターの「意思決定疲労(Decision Fatigue)」理論では、1日に人間ができる意思決定の数には限界があり、それを超えると判断力が著しく低下し、消耗と後悔を招くとされています。これはビジネスだけでなく、家庭生活、人間関係にも直結する問題です。
さらに、私たちは日々大量の「期待」と「気遣い」を無意識に分配しています。
- SNSの投稿に“いいね”がつくかどうか
- 上司にどう評価されているか
- パートナーが機嫌よくしてくれているか
- 子どもがうまく育っているか
- 周囲に「ちゃんとしてる人」と見られているかどうか
こうした期待や気遣いは、認識している以上にエネルギーを消耗させます。実際、あるメンタルヘルス関連の調査では、日本人の約64%が「他人の期待に応えようとしすぎて疲れる」と回答しています(2023年・調査会社ネオマーケティング調べ)。
だからこそ必要なのが、「エネルギーの分散設計」なのです。
この設計とは、以下の3点を基本とする考え方です。
- 期待の集中を避ける
一つの対象(仕事、恋人、家族など)にすべての期待とエネルギーをかけないようにする。期待の分散は感情の安定を生みます。たとえば、仕事がうまくいかなくても、趣味や信頼できる人間関係が支えになる、というバッファー構造を持つことが大切です。 - 自分で完結できる活動を持つ
他人の反応や成果に左右されない活動――たとえば、読書、散歩、料理、日記、ガーデニングなど。これは、誰にも期待しない時間を持つという意味で、強力なメンタル保護になります。 - 回復の時間と場所を確保する
感情や集中力のエネルギーは「使えば減る」ものです。ビジネス書でよく語られる「タイムマネジメント」ではなく、「エネルギーマネジメント」の視点を取り入れ、自分が“回復する場所”を持つことが長期的なパフォーマンス維持に欠かせません。
たとえば、AppleやGoogleといったグローバル企業では、従業員のメンタルとパフォーマンスを保つために、「1日の中で“何もしない時間”を設ける」ことを制度化しています。
これは、仕事への集中力を高める以前に、人間のエネルギー配分の設計が重要であるという認識があるからです。
また、仕事以外の活動を持っている人の方が、ストレスに強く、燃え尽き症候群になりにくいという研究もあります。東京大学の調査(2021)では、複数の“生きがい”を持っている人は、1つしかない人に比べてうつ病リスクが約30%低いという結果が出ています。
つまり、人生の中で複数の「軸(期待の先)」を持つことは、単なる精神的慰めではなく、明確な予防策でもあるのです。
最後にもう一度強調したいのは、「エネルギーの分散」は“諦め”ではない、ということ。むしろそれは、自分の人生を中長期的に守るための戦略的選択です。全力をかける対象は一つではなくていい。期待は、かけすぎるほど重くなり、自分を縛っていきます。
少しずつでも「分ける」ことを意識するだけで、私たちは驚くほど楽になります。疲れていると感じるとき、つい感情的になりやすいとき、自分のエネルギーと期待が、どこにどれだけ偏っているかを見直してみてください。
あなたの人生は、もっと自由に、もっと軽やかに設計できるのです。
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