「もっと成長したいのに、努力が続かない」「他人と比べて落ち込んでしまう」。そんな悩みを抱える自己成長志向の人が、つい見落としがちなのが“他者との信頼関係”です。
アドラー心理学の「共同体感覚」や「劣等感との向き合い方」を軸に、自分を偽らずに努力と向上心を高めていくための本質的な視点を解説します。
信頼関係が育てる「継続できる努力」──“頑張り続けられる人”の裏にある土台とは

「努力が続かない」「モチベーションが保てない」。こうした悩みは、自己成長を望む多くの人に共通するものです。意志力が弱いから?目標設定が甘いから?もちろんそれも一因ですが、見落とされがちな重要な土台があります──
それは“信頼関係”です。
自己啓発やモチベーション理論が語られるとき、しばしば個人の内面ばかりに焦点が当てられます。しかし現実には、「どのような人間関係の中で努力しているか」が、継続力に大きく影響します。
特に、周囲との信頼関係は、自分の弱さを受け入れながらも挑戦し続けられる心理的な“安全地帯”となります。
比較と孤独の中で続かない努力
SNS時代の今、他人の成果や日々の努力が簡単に見えるようになりました。「あの人はあんなに頑張ってるのに、自分は…」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。ここで生じるのが劣等感です。
心理学者アルフレッド・アドラーによれば、人は誰しも「劣等感」を抱えながら生きており、それ自体は成長のエネルギーになります。しかし、信頼できる関係性がないままこの劣等感に支配されると、自己否定が強まり、努力の質が変質します。
たとえば、
- 本当は不安なのに、弱音を吐けない
- 認められたくて無理に成果を作ろうとする
- 他人に追いつこうとして、やるべきことを見失う
といった状態に陥るのです。これでは努力が「自分を隠すための仮面」になってしまい、長続きするはずがありません。
なぜ「信頼関係」が努力を支えるのか?
信頼関係とは、相手に対して心を開いても自分の価値が損なわれないと感じられる関係です。この感覚があると、人は以下の3つの心理的恩恵を得られます。
- 安心して弱さを見せられる
→「完璧じゃなくていい」と思えることで、無理なく挑戦できる。
- 共に努力する仲間の存在がある
→「一人で頑張らなくてもいい」という意識が、支えとなり継続力につながる。
- 承認されることで自己効力感が高まる
→「やればできる」と実感する機会が増え、さらなる努力への原動力になる。
実際、Googleが2015年に行った「プロジェクト・アリストテレス(Project Aristotle)」という調査では、成果の高いチームの最大の要因は“心理的安全性”であると結論づけられました。心理的安全性とは、まさにメンバー同士が信頼し合い、リスクを取っても安心できる関係性のことです。
この研究では、「心理的安全性が高いチームではメンバーのモチベーションが持続しやすく、創造性や問題解決力も高い」とされ、個人の努力の持続にも大きな影響を与えることが示されています。
成果主義の中で失われがちな“人とのつながり”
近年、ビジネスや教育の現場では成果や数字が重視され、短期的なパフォーマンスに注目が集まりがちです。
そうした環境では、「努力とは他者と競い、評価を得るための手段」となってしまい、他人の失敗を喜ぶような関係性すら生まれることがあります。
しかし、努力は本来“比較の外側”で行うものです。努力が続く人の多くは、他者と競うのではなく、「誰かとともに」あることを感じながら、自分のペースで積み重ねています。
たとえば、スポーツの世界ではチームメイトとの信頼関係があることで個人の能力が最大化されることはよく知られています。これは一般の職場や家庭、人間関係においても同じです。
信頼関係のある環境こそ、努力が「自然に」続く場所
努力を「続けよう」と力むのではなく、「自然と続いてしまう」状態を目指すことが理想です。そして、それを可能にするのが、信頼関係です。
- ミスをしても責められない
- 頑張っている姿を見てくれる人がいる
- 成果よりもプロセスを認めてくれる人がいる
こうした関係の中では、「またやってみよう」と思える余白が生まれます。信頼関係は、“努力を継続させるエネルギー”というより、“努力を継続できる余白”をつくる存在なのです。
おわりに:「信頼」は努力の最強の味方
私たちは、どうしても「もっと努力しなければ」と自分を追い詰めてしまいがちです。しかし、その努力が続くかどうかは、あなたの意志力ではなく、「どんな関係性の中でその努力をしているか」によって大きく左右されます。
信頼できる相手がいる。失敗しても応援してくれる人がいる。比較ではなく、支え合える関係がある──これこそが、「継続できる努力」を育てる、最も確かな土台なのです。
信頼は、努力を孤独から解放し、成長を“安心の中で進む挑戦”へと変えてくれます。だからこそ、目指すべきは「もっと頑張ること」ではなく、「安心して頑張れる関係性」を築くことなのです。
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