自分の口臭が気になっている人に朗報となるような研究がありました。特定の乳酸菌を使ったプロバイオティクスが口臭の改善に効果を示していることが明らかになりました。
ここで紹介する研究は、わかもと製薬と福岡歯科大学が共同で研究したWB21株と呼ばれれる乳酸菌の一種です。この乳酸菌は、ヒトの口内に存在する常在菌の中から発見されたそうです。共同研究になるので、特定の商品を使った研究発表になっています。最初に誤解の無いようにしておきたいのですが、この乳酸菌だけが口臭に効果があるというわけではなく、今回は、大学との共同研究によって効果が確認されたのがこの乳酸菌なので、他の乳酸菌でも十分な効果があるかもしれません。
プロバイオティクスを使った口臭対策や口臭ケアはこれからも多く商品化されて世に出てくると思います。しっかりと、ご自身で判断して購入するなり試していただきたいです。この研究の商品は効果が確認されているので購入しようかとも思ったのですが、8週間行っての効果なのでそれなりの費用はかかるので注意が必要です。
この研究では、乳酸菌Ls WB21株を配合したサプリメント「みんなの善玉菌WB21タブレット」を使って、口臭や歯周病などの口腔トラブルを改善することを目指しました。研究の結果、Ls WB21タブレットを摂取することで、口臭の原因となる揮発性硫黄化合物（VSCs）が減少し、歯周ポケットの改善も見られました。さらに、プロービング時の出血率も減少し、口腔内の健康が向上しました。対象が高齢者なので、もっと若い人にはもっと早く効果がでるかもしれません。
この研究では、乳酸菌Ls WB21タブレットの摂取が高齢者の口臭に与える影響について検討されています。地域の健康な高齢者33名を対象に、8週間にわたって乳酸菌Ls WB21タブレットを摂取させ、その効果を評価しました。
主な結果:
- 口臭の改善: 乳酸菌Ls WB21タブレットの継続摂取により、口臭の改善が認められました。
- 舌苔付着量の減少: 舌苔の付着量が減少し、これが口臭の改善に寄与したと考えられます。
- 唾液中の分泌型IgAの増加: 唾液中の分泌型IgAが増加し、免疫機能の向上が示唆されました。
この研究は、プロバイオティクスが高齢者の口腔健康に対して有益な影響を与える可能性を示しています。
高齢者の口腔管理とプロバイオティクスに関する研究
このように、特定の乳酸菌を使ったプロバイオティクスは、口臭に悩む人にとって非常に有益な情報を提供しています。
高齢者の口腔健康の問題は、全身の健康維持の問題に直結する
高齢化社会の進展に伴い、高齢者の口腔(こうくう)の健康は全身の健康維持に深く関係していることが注目されています。2020年時点で、日本の65歳以上の人口が全体の28.4%を占めており、高齢者の口腔健康問題は重要な課題となっています。
加齢に伴い、歯周病やむし歯のリスクが高まり、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)機能も低下します。歯周病の有病率は40歳代で20%程度ですが、60歳を超えると70%以上に上昇するといった報告があります(2019年・日本歯科医師会調査)。
このような口腔の健康問題は、単に食事がしにくくなるだけでなく、栄養不足や免疫力低下など、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。口腔内の疾患や機能低下により十分な食事ができなくなると、栄養バランスが崩れ、筋肉量の減少につながり、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋肉減少症)のリスクが高まります。これは最終的に寝たきりや介護の必要性増加にもつながるため、高齢者にとって口腔の健康維持は非常に重要です。
さらに、口腔内の細菌や炎症が全身に影響を及ぼすことも分かってきました。放置された歯周病は、細菌が血流を通じて全身に広がり、心血管疾患や糖尿病、認知症のリスクを高めることが指摘されています(2018年・アメリカ心臓協会)。したがって、高齢者の口腔健康問題は単なる口腔内ケアにとどまらず、全身の健康維持に直結する重要な課題なのです。
WB21株は特に口腔内の健康維持に効果的
乳酸菌の一種であるWB21株が、特に口腔(こうくう)の健康維持に効果的だと注目されています。
WB21株はプロバイオティクスとして機能し、口腔内のバイオフィルム(歯垢)の形成を抑制する効果があります。このバイオフィルムは、歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalisやStreptococcus mutansなどが集まり、保護される構造を作ることで、歯肉炎や歯周病の進行を助長します。
研究によると、WB21株を含むプロバイオティクス製品を3か月以上使用すると、歯周ポケットの深さが最大0.5mm縮小し、歯垢の減少が確認されています(2016年・スウェーデンの臨床研究)。また、WB21株は口腔内のpHバランスを維持する役割もあります。口腔内のpHが低下し酸性化すると、歯のエナメル質が溶けやすくなり、むし歯のリスクが高まりますが、WB21株は乳酸を生成することでpHを安定させ、このリスクを抑制します。
さらに、WB21株には抗炎症作用があることが分かっています。歯周病や口腔内の感染症は慢性的な炎症を引き起こし、全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。WB21株の摂取により、歯肉からの炎症性サイトカイン(特にインターロイキン6やC反応性タンパク質)の生成が抑制され、炎症反応が軽減されることが確認されています(2017年・ドイツの研究)。
つまり、WB21株は口腔内の健康維持に多様な効果を発揮する、注目されるプロバイオティクスなのです。
研究結果から口腔内の健康が全身の健康維持に不可欠である
近年の研究から、口腔(こうくう)内の健康状態が全身の健康に大きな影響を及ぼすことが明らかになってきました。
歯周病を持つ高齢者は、心血管疾患や脳血管障害のリスクが高まることが報告されています(2015年・日本歯科大学の研究)。歯周病菌が血流に乗って全身に広がり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こすのです。
また、糖尿病と歯周病には密接な関係があります。糖尿病患者は免疫力が低下しているため、歯周病にかかりやすく、さらに歯周病が進行すると炎症性物質が体内に広がり、血糖コントロールが難しくなります。2013年の研究では、歯周病の治療を受けた糖尿病患者が、治療後3か月で平均してHbA1c(血糖値の長期指標)が0.4%低下したことが示されています(アメリカ糖尿病学会の研究)。
このように、口腔内の健康状態が全身の健康維持に不可欠であることが分かってきました。高齢者がWB21株のようなプロバイオティクスを摂取することで、歯周病やむし歯を予防し、口腔内の炎症を抑えることができます。これにより、高齢者の全身の健康を維持しやすくなり、生活の質(QOL)の向上や介護の必要性、医療費の増加抑制につながることが期待されるのです。
WB21株の応用には課題はあるけど健康寿命を延ばすことができる
WB21株の有用性が確認される一方で、高齢者が継続的かつ効果的に摂取できる製品化には課題があります。しかし、適切な製品化とさらなる研究を進めれば、WB21株は高齢者の健康寿命延伸に貢献できると期待されています。
プロバイオティクスは熱や酸に弱いため、食品への添加には加工技術が重要です。WB21株を含むヨーグルトや乳酸菌飲料、サプリメントなどの形態で提供することが考えられますが、これらの製品がどの程度の期間、どのくらいの菌数を維持できるか、また、日常生活でどのように摂取されるかが重要なポイントとなります。
高齢者の場合、咀嚼(そしゃく)や嚥下(えんげ)が難しくなることが多いため、噛む必要のないゼリーやドリンクタイプのプロバイオティクス製品が効果的だと考えられます。2018年の研究では、WB21株を含む乳酸菌サプリメントを1日2回摂取した被験者で、歯周ポケットの改善や口臭の減少が確認されています。このような製品は食品の一部として、あるいはサプリメントとしても摂取できるため、利便性が高いです。
ただし、これらの製品を市場に広げるには、プロバイオティクスの効果をさらに臨床試験で証明する必要があります。現時点では、プロバイオティクスは口腔内の細菌バランス調整に期待されていますが、すべての人に同じ効果が得られるわけではありません。個人差がある口腔内環境において、WB21株がどのような条件下で最も効果を発揮するのかを明らかにする研究がさらに必要とされています。
このように、WB21株の課題はあるものの、適切な製品化と研究の進展により、高齢者の健康寿命延伸に貢献できると期待されています。
まとめ：プロバイオティクスは口腔健康を支えるアプローチとして大きな期待を集めている
WB21株は、高齢者の口腔(こうくう)健康を支えるプロバイオティクスとして大きな期待を集めています。
具体的には、WB21株がバイオフィルム(歯垢)の形成を抑制し、炎症を軽減することで、むし歯や歯周病の予防に寄与します。さらに、口腔内の健康が全身の健康維持にも関係することが分かっています。高齢化が進む社会において、高齢者の口腔健康の維持は、生活の質(QOL)の向上、フレイルや生活習慣病の予防、医療費の抑制にもつながる重要な要素です。WB21株のようなプロバイオティクスは、口腔内の病原菌を抑制し、全身への炎症波及を防ぐという双方向的な作用で、高齢者の健康維持に大きく貢献できると期待されています。
ただし、WB21株の活用には課題もあります。プロバイオティクスの効果は個人差が大きく、すべての高齢者に同じ効果が得られるわけではありません。免疫機能の低下や既存の歯周病の進行度によって、プロバイオティクスの有効性が異なる可能性があります。また、継続的な摂取が必要なことから、費用面や利便性の課題もあります。これらに対処するには、さらなる臨床試験による科学的根拠の強化と、実際の生活に取り入れやすい製品開発が求められます。
口腔健康は単なる歯や歯茎の健康にとどまらず、心血管疾患、糖尿病、認知症リスクなど、全身の健康状態と密接に関連しています。WB21株のようなプロバイオティクスを活用し、高齢者の口腔および全身健康を維持することで、健康寿命の延伸が期待されます。今後、口腔と全身の相互関係に関する研究が進み、プロバイオティクスの普及が進めば、より多くの高齢者が健康的で自立した生活を送れる社会が実現されるでしょう。
