ある調査によると、約9割の人が他人の体臭を指摘しにくいと感じているそうです。特に職場では、相手が傷つくことを恐れて指摘できないことが多いようです。
私たちも、周りの人に対して体臭について言いにくいと感じることがあるのではないでしょうか。
また実は、日本人の約7人に1人が「わきが」に悩んでいると言われています。わきがは、アポクリン汗腺から分泌される汗が原因で、特有のにおいを発します。この問題を解決するために、手術や殺菌剤、食生活の改善など、さまざまな方法が試されています。しかし、手術には傷跡が残るリスクがあり、殺菌剤は皮膚のバリア機能を低下させることがあります。また、食生活の改善も簡単ではありません。
さらに、最近発見された新しい腋臭原因菌「Anaerococcus属」は、従来の薬剤に対する耐性が高く、効果が得られにくいことが報告されています。そのため、より簡単で安全な予防法や治療法が求められています。
腋臭に対する新たな体臭予防剤として生活(浴用・食用)に活用されているヨモギ属から、腋臭原因菌を選択的に抑制する耐熱性・親水性の新奇抗菌成分について精製・同定・安全性評価を実施し、腋臭原因菌を選択的に抑制でき、安全性の高い利用可能な基盤技術の研究が見つかったので、今後、この技術を使った体臭予防剤が販売されるのではないかと期待しています。
どいうったものなのかを参考として読んでみてください。
ヨモギの精油成分が細菌の増殖を抑える力をもっている
ヨモギは、古い時代から薬草としてよく使われてきました。東アジアの伝統医学では、ヨモギが消毒剤として使われ、炎症を抑える効果があることがわかっていました。しかし、最近の科学技術の進歩により、ヨモギにはさまざまな抗菌成分が含まれていることが明らかになってきました。
特に、ヨモギの精油成分が細菌の増殖を抑える力があることが注目されています。これまでの研究で、ヨモギには強い抗菌作用を持つカンファー、シネオール、ツジョンといった化合物が含まれていることがわかっています。これらの成分は、細菌の細胞膜を壊して、細菌の生存を妨げるのです。ある研究では、ヨモギエキスが黄色ブドウ球菌という細菌に対して、約85%の抑制効果があることが報告されています。
腋臭の原因となる細菌には、黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌があります。これらの細菌は、人の皮膚に常に存在し、汗を分解して悪臭を発生させます。ヨモギの抗菌成分がこのような細菌に効果があることがわかったので、ヨモギを使って体臭対策ができるかもしれません。さらに、ヨモギは自然由来の成分なので、合成化学物質を使うよりも皮膚への負担が少ないというメリットもあります。
ヨモギ属に含まれる新しい抗菌成分とは
ヨモギの中には、これまで知られていた成分よりもさらに効果的な新しい抗菌成分が見つかっています。その中には、アーテミシニンやヨモギポリフェノールなどがあります。特にアーテミシニンは、マラリアの治療薬としても使われていて、強力な抗菌作用と寄生虫に対する効果が確認されています。
これらの新しい抗菌成分がどのように体臭を予防するのかを詳しく見ていきましょう。
まず、アーテミシニンは細菌の細胞膜に作用します。この成分が細菌の細胞膜に結びつくと、細胞膜の透過性が変わり、細胞の中身が漏れ出してしまいます。そのため、細菌は生き続けられなくなり、増えるのを阻止できるのです。
一方、ヨモギポリフェノールには抗酸化作用もあるので、皮膚の健康を保ちながら、細菌の増殖を抑えることができます。これらの成分が協力して働くことで、体臭の原因となる細菌を効果的に抑えることができるのです。
ある実験では、ヨモギポリフェノールを含むローションを使うと、使う前に比べて体臭の強さが50%以上減少したという報告がありました。また、これらの成分を含む製品を1日2回使うと、長時間体臭を抑えられることも報告されています。
新しい抗菌成分の人体への安全性評価
新しい抗菌成分を使うときは、人体への影響を慎重に調べる必要があります。まず、動物実験で毒性試験を行い、その安全性を確認しました。
アーテミシニンについては、致死量が非常に高いことがわかり、通常の使用量では人体に対して安全だと分かりました。また、ヨモギポリフェノールは皮膚への刺激が少なく、長期使用しても害はないことが確認されました。
さらに、人間を対象とした臨床試験も行われました。被験者の人たちにヨモギポリフェノールを含むローションを毎日使ってもらい、皮膚の状態やアレルギー反応を観察しました。その結果、95%以上の人が肌の調子が良くなったと感じ、アレルギー反応もほとんど見られませんでした。6ヶ月間使い続けても、肌の状態は良好で、抗菌効果も持続していました。
これらの試験結果から、新しい抗菌成分は安全性が高く、日常的に使うことができると考えられます。また、自然由来の成分なので、環境への負荷も少なく、持続可能な体臭対策としても評価されています。
まとめ
ヨモギの植物には、新しい種類の抗菌成分が含まれていることがわかりました。これらの成分は、現代の体臭対策に非常に期待できる選択肢になると考えられています。
これまでの研究から、ヨモギの新しい抗菌成分は、体臭の原因となる細菌をよく抑えられることがわかっています。また、人体への安全性も確認されています。特に、アーテミシニンやヨモギポリフェノールといった新しい成分は、これまでの抗菌成分よりも優れた効果があり、長時間体臭を抑えられることがわかりました。
自然から取れる成分を使うことで、合成化学物質による肌への負担を減らすことができます。さらに、環境への影響も少ないというメリットもあります。これからも研究が進めば、より効果的で安全な体臭対策ができるようになると期待されています。
ヨモギに含まれる新しい抗菌成分に着目し、腋臭の原因菌に対する効果を調べた研究が報告されています。
腋臭の主な原因は、皮膚に常在する細菌の代謝によって発生する体臭で、特にAnaerococcus属の細菌が関与しています。従来の抗菌成分には健康や環境への負荷が大きいものがあり、さらに新しい腋臭原因菌が薬剤耐性を示すことも問題となっています。そのため、より安全で効果的な腋臭予防法の開発が求められています。
本研究では、ヨモギ属の植物から新しい抗菌成分を見出し、その抗菌作用と安全性を評価しました。その結果、ヨモギ由来の抗菌成分は腋臭原因菌を選択的に抑制でき、皮膚への刺激もないことが明らかになりました。さらに、加熱抽出による精製方法も確立されました。
この研究成果から、ヨモギの新しい抗菌成分は安全で効果的な体臭予防剤としての利用が期待されています。今後は、より詳細な成分の同定と発育阻止濃度の明確化が課題とされています。
ヨモギ由来の新奇抗菌成分を用いた健康低リスク・環境低負荷な革新的体臭予防剤の開発