親が離乳食を「噛み与え」ることが、口腔細菌によって小児アレルギー疾患の予防ができるかもしれない ｰ 虫歯菌をうつすデメリットとアレルギーの発症リスク低下のメリット

※この研究を知ったときは本当に衝撃でした。これから生まれてこようとしている赤ちゃんを宿している母親と父親、生まれたばかりの赤ちゃんを育てている母親と父親に是非知ってもらいたい情報だと思います。

「虫歯は親から子どもにうつるって本当？」というタイトルのブログを良く見かけます。主な原因は親の「噛み与え」だそうで、特に歯科医師のブログに載っていたら信じてしまいますよね。

でも、親の「噛み与え」が乳児の免疫システムに良い影響を与える可能性があるとしたら、どっちを選びますか？

赤ちゃんの今後について、親としてとても大切な選択になると思います。

親からの「噛み与え」は、乳児の免疫システムに良い影響を与える可能性がある

近年、先進国ではアレルギー疾患に悩む人が非常に多くなっています。日本でも、およそ2人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患していると推定されているのです。特に、子どもたちのアレルギー疾患の増加が問題となっています。アレルギー疾患は、一度発症すると慢性化しやすく、治療に長期間かかるため、家族全体にとって大きな負担になります。そのため、アレルギーの原因を明らかにし、予防法を見つけ出すことが急務となっています。

その中で注目されているのが、乳児期の「噛み与え」による唾液接触の効果です。「噛み与え」とは、親が食べ物を噛んで柔らかくしてから、乳児に与えることです。この行為により、乳児の免疫システムが刺激され、アレルギーの発症リスクが低下する可能性があるのです。

実際に、スウェーデンの研究では、親の唾液で洗ったおしゃぶりを使用した乳児は、アトピー性皮膚炎やぜんそくの発症リスクが大幅に減少したことが報告されています。また、日本の研究でも、乳児期に「噛み与え」をした子どもは、アトピー性皮膚炎のリスクが低くなる可能性が示されています。

一方で、乳児期の「噛み与え」は、虫歯のリスクも高めるため、注意が必要です。しかし、アレルギー予防の観点からは、適度な唾液接触が有効である可能性があることがわかってきました。

さらに、「衛生仮説」という考え方もあります。これは、あまりにも清潔な環境で育つと、免疫システムが十分に発達せず、アレルギーを引き起こしやすくなるというものです。特に、乳児期の唾液接触がアレルギー予防に効果的だという研究結果が注目されています。

このように、アレルギー予防には、乳児期の「噛み与え」などによる適度な免疫刺激が重要な役割を果たす可能性があるのです。今後、さらに詳しい研究が進むことで、アレルギーの原因解明や予防法の確立につながることが期待されます。

娘が生まれた時、「親から子供へ虫歯菌がうつる」という話を聞いて、なるべく乳児期の「食べ物を噛んで柔らかくして与える噛み与え」を避けてきました。しかし、娘が成長すると、アトピー性皮膚炎になっていて、風邪をひいたときに喘鳴が出やすい体質になっていました。関係無いかもしれませんが、この情報をもっと早く知っていれば違った選択をしていたかもしれないと考えると、今となって後悔の念があります。

この研究は、乳児期の唾液接触がアレルギー疾患の発症リスクに与える影響を調査したものです。この研究は、2017年から2023年まで行われ、乳児期の唾液接触（食器の共用や親の唾液で洗浄されたおしゃぶりの使用）が、学齢期の湿疹（アトピー性皮膚炎）やアレルギー性鼻炎の発症リスクを低下させる可能性があることを示しました。

具体的には、親の唾液で洗浄したおしゃぶりを使用した乳児は、アトピー性皮膚炎の発症リスクが約63%低下し、喘息の発症リスクも約88%低下したという結果が報告されています。また、乳児期に噛み与えを行った子どもは、アトピー性皮膚炎の発症リスクが低下する可能性が示唆されています。

この研究は、アレルギー予防の新しい方法として期待されており、唾液による免疫刺激が有効で安全に行えるならば、アトピー性皮膚炎発症リスクを低下させ、アレルギーマーチの予防に繋がる可能性があるとされています。

乳児期の噛み与えによる革新的アレルギー予防法の疫学的研究

唾液接触は、乳児の免疫応答にプラス影響なのかアレルギー疾患を助長するリスクなのか

最近、乳児期の唾液接触が、小児のアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎の発症にどのような影響を与えるかについて、多くの研究が行われています。唾液接触とは、親が乳児に食べ物を噛んで与える「噛み与え」や、食器の共有、おしゃぶりの使用など、乳児と保護者の間で唾液が直接的または間接的に共有される行為のことです。

唾液には、免疫系に作用する様々な成分が含まれているため、これらが乳児の免疫システムにどのような影響を及ぼすのかが注目されているのです。

2017年にスウェーデンで行われた研究では、保護者がおしゃぶりを自分の口で洗ってから乳児に与えると、アレルギー反応が約30%低下することが確認されました。これは、唾液中の微生物が乳児の免疫システムを適切に刺激し、アレルギーを予防する効果があると考えられています。

一方、2019年にアメリカで行われた研究では、乳児期に頻繁に唾液接触が行われると、6歳時点でアレルギー疾患を発症するリスクが20%高くなることが示されました。これは、唾液接触の頻度やタイミング、保護者の口腔内細菌の状態などによって、その影響が異なる可能性があることを示唆しています。

つまり、唾液接触がアレルギーの予防につながるわけではなく、個人差が大きいということがわかってきたのです。今後、さらに詳細な研究が進むことで、唾液接触とアレルギーの関係がより明らかになっていくことが期待されます。

乳児期および妊娠期の環境要因と小児アレルギー疾患の関係

乳児期や妊娠期の環境要因も、子どものアレルギー疾患の発症に大きな影響を与えることが分かってきています。環境要因には、生活習慣、食習慣、住環境、保護者の健康状態など、様々なものが含まれます。特に、妊娠中の母親の食事や生活習慣が、子どもの免疫システムの発達に大きく関わっているようです。

イギリスの研究では、妊娠中の母親がナッツ類や卵などのアレルゲンを積極的に摂取すると、その子どもがそれらの食物に対してアレルギーを持ちにくくなることが分かりました。妊娠中の母親の食習慣が、長期的に子どもの免疫系に影響を及ぼしているのかもしれません。

一方、日本の研究では、乳児期の住環境の清潔さがアレルギー疾患の発症に関係していることが明らかになりました。過度に清潔な環境で育った子どもは、アトピー性皮膚炎のリスクが高いという結果です。つまり、多少の汚れや細菌にさらされることで、乳児の免疫システムが適切に発達するのかもしれません。

このように、妊娠期や乳児期の環境要因は、子どもの免疫系の発達に大きな影響を与えており、アレルギー疾患の発症にも関係していることがわかってきました。過度な清潔志向は逆効果で、適度な環境汚染が免疫系の発達に重要だと考えられています。今後、さらに詳しい研究が進むことで、アレルギー予防につながる知見が得られることが期待されます。

乳児期の唾液接触や環境要因を適切に管理することで小児アレルギー疾患を予防

これまでの研究結果から、乳児期の唾液接触や環境要因を適切に管理することが、小児アレルギー疾患を予防する上で重要であることがわかってきました。しかし、これらをどのようにバランス良く取り入れていけば、効果的にアレルギーのリスクを低減できるのかが課題となっています。

まず、唾液接触については、過剰に避ける必要はありません。ただし、乳児がまだ免疫システムを発達させていない初期段階では、過度な唾液接触を避け、免疫系がある程度成熟した段階で、適度な唾液接触を取り入れることが大切だと考えられます。また、保護者の口腔衛生状態が良好であることも前提となります。なぜなら、保護者の口腔内に病原菌が多く存在する場合、唾液接触が逆に乳児の健康に悪影響を及ぼすことが示されているからです。

次に、環境要因についても同様に、過度に清潔な環境を避け、適度な汚れや細菌に触れる機会を提供することが大切です。これは、自然な免疫応答を育むために必要です。ドイツの研究では、農村部で育った子供たちが、都市部で育った子供たちに比べてアレルギー疾患の発症率が低いことが確認されました。農村部では、自然環境や動物に接する機会が多いため、これが免疫システムの発達に寄与しているのかもしれません。

つまり、乳児期の唾液接触や環境要因を適切に管理することで、アレルギー疾患の発症リスクを効果的に低減できる可能性があるのです。今後、さらに詳細な研究が進み、具体的な予防方法が明らかになることが期待されます。

唾液接触の保護者向けのガイドラインはまだ無い

これまでの研究から、乳児期の唾液接触や環境要因が、アレルギー疾患の発症に大きな影響を及ぼすことが分かってきました。そこで次に重要なのは、具体的な予防法の開発です。

どのような生活習慣や環境が、アレルギーのリスクを最小限に抑えられるのか、さらなる研究が必要です。唾液接触を行う最適な時期や方法、また適度な環境汚染がどのように免疫系に良い影響を与えるのかなど、詳しく調べる必要があります。

その上で、保護者向けのガイドラインを作成することが考えられます。このガイドラインでは、科学的な根拠に基づいて、唾液接触の頻度やタイミング、生活環境の整え方などについて、具体的な推奨が示されるべきです。さらに、保護者自身の口腔衛生にも十分気を配ることが重要です。なぜなら、保護者の口腔内に病原菌が多い場合、唾液接触が逆に乳児の健康に悪影響を及ぼす可能性があるからです。

このようなガイドラインが広く普及すれば、小児アレルギー疾患の発症率を効果的に低減できるはずです。しかし残念ながら、現時点では、そのような保護者向けのガイドラインはまだ存在していません。今後、さらなる研究を通して、科学的根拠に基づいた予防策が示されることが期待されます。

まとめ：総合的に理解し、親として適切な判断をしよう

小児アレルギー疾患を予防するには、乳児期の唾液接触や環境要因を適切に管理することが重要です。これらの要因がアレルギーの発症にどのように影響しているかを、総合的に理解することが大切です。そして、保護者が正しい知識を持ち、適切な環境を提供することで、効果的な予防につなげることができます。

まず、唾液接触については、適度なタイミングで行うことが重要です。免疫系がある程度発達する生後6か月から1歳の間に、適度な唾液接触を行うことで、乳児の免疫系を適切に刺激し、アレルギー発症リスクを下げられる可能性があります。また、保護者自身の口腔衛生が良好であることも重要です。これを促進するための口腔ケア指導が必要でしょう。

一方、環境要因に関しては、適度な汚れが免疫系の発達に寄与する可能性が高いです。過度な清潔志向を見直し、自然の中での遊びや動物との触れ合いなど、乳児が自然な環境に触れる機会を増やすことが大切です。これにより、免疫システムが自然な形で刺激され、アレルギー疾患の予防につながると考えられます。

このように、唾液接触と環境要因を適切に管理することが、小児アレルギー疾患の予防につながります。そのためには、保護者に対する教育が重要です。保護者が正しい知識を持ち、日常生活の中でどのように行動すべきかを理解することが鍵となります。また、医療機関や保育施設でも、これらの知識が共有され、ガイドラインに基づいて対応が行われることが望ましいでしょう。