PR

人がネガティブなニュースを見続ける「ドゥームスクローリング」は、脳が潜在的な脅威を探し続ける関心を執着へと変えて合理的判断を鈍らせる – SNSやニュースアプリのアルゴリズムは、強い感情を引き起こすコンテンツを優先して表示している

人がネガティブなニュースを見続ける「ドゥームスクローリング」は、脳が潜在的な脅威を探し続ける関心を執着へと変えて合理的判断を鈍らせる - SNSやニュースアプリのアルゴリズムは、強い感情を引き起こすコンテンツを優先して表示している かくしゃくの独り言
スポンサーリンク
スポンサーリンク

人間がネガティブなニュースに惹かれる理由

人間がネガティブなニュースに惹かれる理由

私たちが日常生活でネガティブなニュースや情報に引き寄せられるのは、ただの好奇心だけではなく、「危機回避本能」が関与していると言われています。この本能は、私たちが未知の危険に直面したときに適切な行動を取るために、脳が情報を集めて分析する働きと結びついています。しかし、この危機回避本能は本当に「私たち個人」のものなのでしょうか?それとも、社会全体の影響を受けているのでしょうか?

心理学や神経科学の研究によると、人間の脳はポジティブな情報よりもネガティブな情報に対して約2.5倍も敏感に反応します(Baumeister et al., 2001)。これは「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれる現象で、私たちの脳が潜在的なリスクや脅威を常に探していることを示しています。特に、脳の扁桃体は恐怖や危機に関する情報を処理し、危険を示す情報が入るとストレスホルモンを分泌し、体を警戒モードに切り替えます。このシステムは進化の過程で形成され、狩猟採集社会では命を守るために重要でした。

しかし、現代社会では、この危機回避本能が「過剰に作動」し、私たちの生活に悪影響を及ぼしています。特に、SNSやニュースアプリは、私たちの脳が危険を認識しやすい情報を優先的に届ける仕組みになっており、知らず知らずのうちに「ネガティブ情報の渦」に巻き込まれています。例として、2020年の新型コロナウイルスの流行時には、SNSやニュースサイトには感染拡大に関する報道が溢れ、人々はその情報を求め続けました。その結果、不安やストレスが高まり、過剰な買い占めやパニック行動が世界中で見られました。

「私の危機」と「社会の危機」の違い

ここで重要なのは、「危機回避本能がもたらす情報への執着」が本当に「個人の本能」によるものなのか、「社会が作り出した現象」なのか、という点です。

個人が直面する危機と社会全体で共有される危機には大きな違いがあります。個人レベルの危機は「仕事を失う」「健康を損なう」「事故に遭う」といった直接的な危険です。一方、社会レベルの危機は「経済不況」「戦争」「パンデミック」といった広範囲に影響を及ぼす出来事を指します。社会的危機はメディアを通じて広まり、人々の不安を増幅します。

2020年のコロナ禍では、この「社会的危機」がメディアを通じて拡大し、人々は感染症のリスクだけでなく、経済の不安定さや社会秩序の崩壊に過剰に反応しました。その結果、一部の地域ではトイレットペーパーの買い占めが発生し、アメリカでは銃や弾薬の購入が急増しました。このように、個人が危機を感じることと、社会全体の空気として危機が醸成されることには大きな違いがありますが、SNSやニュースの影響で私たちは「社会全体の危機」を自分自身の危機のように感じやすくなっています。

アメリカ心理学会(APA)の2020年の調査によると、コロナ禍におけるストレスレベルは過去20年間で最も高い水準に達していました。特に、ニュースやSNSを頻繁に利用する人ほどストレスレベルが高い傾向があり、情報の過剰摂取が心理的負担を増やすことが分かっています。

「危機回避本能」は誰の利益になるのか?

危機回避本能が私たちの脳に深く根付いていることは確かですが、その本能が誰の利益になっているのかを考えると、新たな視点が浮かび上がります。

SNSやニュースサイトのアルゴリズムは、ユーザーの関心を引きつけ、長く滞在させることを目的としています。特に広告収入を得るビジネスモデルでは、ユーザーがページを開き続けることが重要であり、そのためには「感情を刺激する情報」が効果的です。実際、Facebookの元幹部が2021年に暴露したデータによると、ネガティブな投稿はポジティブな投稿よりも1.5倍のエンゲージメントを得やすいことが明らかになっています。これは、SNSが意図的に「ネガティブな情報を優先的に拡散する仕組み」を持っていることを示しています。

政治や経済の分野でも、危機回避本能が利用されることがあります。選挙の際に候補者が「このままでは国が危ない」「この政策がなければ社会は崩壊する」といったメッセージを発信するのは、危機を煽ることで有権者の関心を引きつけ、行動を促すためです。広告戦略でも健康食品や防犯グッズのCMが「このままでは病気になる」「犯罪被害に遭うかもしれない」といった恐怖を前面に押し出すのは、人々の危機回避本能を刺激し、購買意欲を高めるためです。

このように、私たちが「本能的に」ネガティブな情報に執着していると思っている部分の多くは、実際には社会の仕組みによって作り出されたものであり、その本能が特定のビジネスや政治戦略に利用されているという側面があります。

本能は個人のものではなく、社会が作り出したものでもある

危機回避本能がもたらす情報への執着は、人間の進化の過程で形成された本能的なメカニズムです。しかし、現代社会では、その本能がメディアやアルゴリズム、政治的な意図によって強化され、私たち自身の行動や判断に影響を与えています。その結果、私たちは「自分が知りたいから情報を追い続けている」と思い込んでいますが、実際には「誰かに見せられている情報を追わされている」可能性もあるのです。

スポンサーリンク

「知りたい欲求」が私たちを動かす理由

「知りたい欲求」が私たちを動かす理由

なぜ私たちは「知りたい」と思うのでしょうか?

私たち人間は、生まれつき「知りたい」という強い欲求を持っています。新しい情報を得ることで好奇心が満たされ、満足感を得るのです。しかし、この「知りたい」という欲求は本当に私たち個人のもので、自分の意志で動いているのでしょうか?それとも、社会の仕組みやメディアの戦略によって意図的に操作されているのでしょうか?

心理学や神経科学の研究によると、新しい情報を得ることは、脳内の「報酬系」と呼ばれる神経回路を活性化させることが分かっています(Kang et al., 2009)。この報酬系は、食事やセックスなどの生存に必要な行動を促す仕組みと同じで、ドーパミンという神経伝達物質が分泌されることで、私たちは「もっと知りたい」と感じるようになるのです。

特に、2014年の実験(Lau et al.)では、新しい情報を得たときの脳の反応をMRI(磁気共鳴画像法)で調べた結果、ギャンブルで勝ったときや美味しい食べ物を食べたときと同じように、脳の報酬系が活性化していることが確認されました。この研究は、「知ること」が単なる知的な行為ではなく、生物学的な快楽と密接に結びついていることを示しています。

この仕組みのため、私たちはニュースやSNSの情報を際限なく追い続けることがあります。特に、予測できない情報や意外性のある内容に対して、より強い関心を持つ傾向があります。これは「情報の不確実性が報酬系を活性化させる」という理論(Hsu et al., 2005)によっても説明されます。つまり、完全に理解できないことや、何が起こるかわからない状況に直面すると、私たちはより多くの情報を求め、執着しやすくなるのです。

情報の中毒性はどのように作られるのか?

ここで問題となるのは、私たちの「知りたい欲求」が自然に働いているのか、それとも外部の力によって強化され、操作されているのかという点です。

特に、SNSやニュースアプリのアルゴリズムは、私たちの脳が情報に飢え続けるように設計されています。Facebookの元幹部が2021年に明かした内部データによると、ユーザーの滞在時間を最大化するために「感情を刺激するコンテンツ」が優先的に表示されるようになっています。この仕組みによって、私たちは次々と新しい情報を求めてしまい、結果的に時間を忘れて画面を見続けることになります。

また、2018年のYouTubeのデータによると、同社のアルゴリズムは、ユーザーの関心を引きつけるために「極端な内容」「意外性のある動画」を積極的に推薦していることがわかっています。これは情報の中毒性を意図的に強化する戦略の一例であり、私たちの「知りたい欲求」が外部の力によって強化されていることを示しています。

さらに、2019年に発表された研究(Zhou et al.)では、SNSのスクロール動作がギャンブル機械(パチンコやスロット)の「ランダム報酬システム」と同じ原理で設計されていることが明らかになりました。次にどのような情報が出てくるかわからない「不確実性」があることで、私たちはより強く情報に依存するようになります。このシステムはカジノのスロットマシンと同じメカニズムを持ち、知らないうちに時間を奪われる要因となっています。

「知りたい欲求」は本当に私たちのものなのか?

では、私たちの「知りたい欲求」は本当に個人のものであり、自由な意志で動いているのでしょうか?それとも、何者かによって意図的に操られているのでしょうか?

ここで重要なのは、「知りたい欲求」は本来、人間が生存するために必要な本能的なものであり、決して悪いものではないということです。しかし、現代社会においては、その欲求が過剰に刺激される仕組みが作られており、結果的に私たちはコントロールを失いがちになります。

政治の分野では「情報操作」という形で人々の知りたい欲求が利用されることがあります。選挙期間中には、候補者が相手陣営に関するネガティブな情報を意図的にリークし、人々の関心を引くことで選挙戦を有利に進めるケースがあるのです。また、メディア企業は視聴率やクリック数を増やすためにセンセーショナルな見出しを使ったり、実際の事実よりも過激な表現を用いることが多いです。

2016年のアメリカ大統領選では、フェイクニュースが広範囲に拡散し、特定の候補者に対する印象を大きく変えたことが議論になりました。特に、SNS上では「バズる」ことが目的となり、事実確認が不十分な情報が拡散しやすくなっています。このような環境では、私たちの「知りたい」という純粋な欲求が利用され、操られている可能性が高いのです。

情報の中毒性とどう向き合うべきか

私たちは、自分の知りたいという欲求が純粋なものであり、個人の意志によるものだと信じがちですが、その欲求は、多くの場合、外部の仕組みによって強化され、利用されています。

情報を求めることは本能的な行動であり、それ自体が悪いわけではありません。しかし、現代のメディア環境では、その本能が過剰に刺激され、制御不能な状態に陥りやすくなっています。特に、SNSやニュースアプリのアルゴリズムは私たちの知りたい欲求を利用し、長時間の滞在を促すように設計されているため、無意識のうちに情報の中毒状態に陥ることがあります。

このような状況を理解することで、私たちは自分の「知りたい欲求」が本当に自分のものなのか、それとも誰かの利益のために利用されているのかを見極めることができるようになります。

スポンサーリンク

情報過多が私たちの判断力を低下させる理由

情報過多が私たちの判断力を低下させる理由

情報が多すぎると、なぜ人は正しい判断ができなくなるのでしょうか?

現代社会では、私たちが一日に受け取る情報量が非常に多くなっています。スマートフォンやパソコンを使って、ニュースやSNS、動画、メール、広告などから常に新しい情報を受け取っています。しかし、情報が増えるほど、私たちの判断力が低下する現象が起きています。

この現象は「情報過負荷(Information Overload)」と呼ばれ、心理学や経済学の分野で研究されています。1970年、アメリカの政治学者アルビン・トフラーは著書『未来の衝撃』の中で、「情報量が一定の限界を超えると、人はそれを処理しきれず、意思決定の質が低下する」と指摘しています。さらに、2004年にスタンフォード大学の研究チーム(Iyengar & Lepper)が行った実験では、選択肢が多すぎると人は決定を避ける傾向があることが示されました。24種類のジャムを提示された場合よりも、6種類のジャムだけを提示された場合の方が、消費者の購入率が10倍高くなるという結果が出ています。これは、情報が増えすぎると、決断を先送りしたり、誤った選択をする可能性が高まることを示しています。

また、神経科学の観点からも、情報過多は脳の認知能力に悪影響を与えることが分かっています。2011年にロンドン大学の研究者(Moore et al.)が行った実験では、被験者に短時間で大量の情報を処理させたところ、前頭前野(意思決定を担う脳の部位)の活動が低下し、注意力や記憶力が著しく低下することが確認されました。このように、私たちの脳は過剰な情報をうまく処理できるようには進化していないため、情報の洪水にさらされると合理的な判断ができなくなります。

SNS時代の情報過多がもたらす「思考停止」

特に、SNSの普及により、私たちは常に新しい情報を浴びる環境にいます。Twitter(現X)、Facebook、Instagram、TikTokなどのプラットフォームは、ユーザーの関心を引きつけるためにアルゴリズムを最適化し、次々と関連情報を表示します。このような環境では、情報を選別する能力が問われますが、実際には人間の脳は膨大な情報を処理しきれず、判断力が鈍ってしまいます。

2019年の調査(Statista)によると、1日にSNSで消費される情報量は平均74GBにも及びます。これは、人間の脳が1日に処理できる情報量(推定34GB)の2倍以上に相当します。つまり、私たちは日々、処理能力を超えた情報にさらされ、判断力が低下しやすい状態に置かれています。

また、SNSのもう一つの問題は、情報の流れが速すぎることです。例として、あるニュースが投稿されると、それに対する反応や新たな関連情報が短時間のうちに次々と追加されます。これにより、人々は一つの情報を深く考える時間を持たずに新しい情報へと注意を移してしまいます。2018年にMIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームが行った調査(Vosoughi et al.)では、フェイクニュースは真実のニュースよりも6倍速く拡散することが明らかになりました。これは、人々が情報を精査する前に次の情報へと移ってしまうため、誤った情報でも簡単に広まる現象を示しています。

このように、SNSが生み出す情報過多の環境では、人々が十分な時間をかけて思考することが難しくなり、「思考停止」に陥るケースが増えています。

情報過多による「判断麻痺」と経済的損失

情報過多がもたらす影響は、個人の認知能力だけにとどまりません。企業や投資家の意思決定にも影響を与え、経済的な損失を生むことがあります。

株式市場では投資家が膨大な市場データやニュース、アナリストの意見にさらされることで、冷静な判断を下せなくなることがあります。これを「情報過多による判断麻痺(Decision Paralysis)」と呼びます。特に市場が大きく変動しているときには、過剰な情報に振り回され、合理的ではない判断を下すことがあるのです。

2020年の新型コロナウイルスのパンデミック初期、株式市場は大きく混乱しました。特に、個人投資家の多くが情報の洪水に巻き込まれ、パニック売りを行った結果、株価の急落が加速しました。JPモルガンの調査によると、この時期に売却を決断した投資家の約65%が、数週間後に株価が回復した際に「売るべきではなかった」と後悔していると回答しています。このように、過剰な情報が投資家の冷静な判断を妨げることで、経済的損失を生むケースは少なくありません。

また、企業の経営においても、情報過多は意思決定の質を低下させる要因となります。2017年にハーバード・ビジネス・レビューが発表した調査では、大企業の経営者のうち74%が「情報の過剰な分析が意思決定を遅らせ、結果的にビジネスチャンスを逃したことがある」と回答しています。これは「分析麻痺(Analysis Paralysis)」と呼ばれる現象で、データが多すぎるために決定を下せなくなる状態を指します。このように、情報が多すぎることは、かえって判断力を鈍らせ、経済的な損失をもたらす可能性があります。

私たちの判断力は本当に自分のものなのか?

このように見ていくと、私たちの判断力は必ずしも自分の意思によって保たれているわけではなく、外部の環境によって大きく左右されていることが分かります。情報が多すぎることで、私たちは正しい判断を下せなくなり、時には意図的に操作されることさえあります。

情報が氾濫する現代において、自分の意思で合理的な判断を下すことはますます難しくなっています。情報の洪水の中で、私たちの思考は誰のものなのか、そして私たちは本当に自分で判断しているのか──この問いを深く考えることが求められています。

スポンサーリンク

ドゥームスクローリングから抜け出すための方法

ドゥームスクローリングから抜け出すための方法

終わりのないスクロールが脳に及ぼす影響

ドゥームスクローリングとは、不安や恐怖をあおるニュースを延々とスクロールし続けてしまう現象を指します。SNSやニュースアプリが進化した現代では、私たちは常に情報の波に飲み込まれ、特にネガティブな情報に執着しやすくなっています。この習慣は単なる「悪い癖」ではなく、脳の生理的な反応によって引き起こされています。

人間の脳は、進化の過程で危険を回避するためにネガティブな情報に敏感に反応するようになっています。これは「ネガティビティ・バイアス(Negativity Bias)」と呼ばれ、心理学者のポール・ロズィン(Paul Rozin)とエドワード・ロイズマン(Edward Royzman)が2001年に発表した研究によると、ポジティブな情報よりもネガティブな情報の方が強く記憶に残る傾向があることが分かっています。このバイアスが、私たちが悪いニュースばかりを探し続ける理由の一つです。

また、ドゥームスクローリングは脳内の報酬系にも影響を与えます。2018年にカリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)の研究によると、SNSのフィードをスクロールする行為は、ドーパミン(快楽を感じる神経伝達物質)の放出を引き起こし、一種の依存状態を作り出すことが分かっています。この研究では、スマートフォンを使う時間が1日3時間を超えると、自己制御能力が低下し、スクロールを止めるのが難しくなるというデータが示されています。つまり、私たちはネガティブな情報を避けるどころか、それを求めるように脳が働いてしまうのです。

さらに、神経科学の観点から見ると、ドゥームスクローリングは脳のストレス反応を引き起こし、コルチゾール(ストレスホルモン)の分泌を増加させます。2020年にスタンフォード大学が発表した研究によれば、SNS上のネガティブなニュースを15分間閲覧するだけで、コルチゾールのレベルが平均で30%上昇することが確認されています。コルチゾールの過剰分泌は、不安感の増大や集中力の低下、免疫機能の低下を引き起こすため、健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。

SNSアルゴリズムがドゥームスクローリングを加速させる

SNSがなぜドゥームスクローリングを助長するのか、その理由の一つはアルゴリズムの問題です。SNSのアルゴリズムは、ユーザーの関心を引き続けるために設計されており、エンゲージメント(いいね、シェア、コメントなど)が高い投稿を優先的に表示する仕組みになっています。

カーネギーメロン大学の研究(2021年)によると、人間はポジティブなニュースよりもネガティブなニュースに約2.3倍の反応を示すことが分かっています。このデータを基に、SNSのアルゴリズムはネガティブなニュースを優先的に表示し、ユーザーの関心を長時間引きつけるようになっています。これにより、私たちはますます不安を煽る情報に囲まれ、ドゥームスクローリングから抜け出せなくなります。

また、SNSの通知機能も問題の一つです。2022年にハーバード大学が行った調査では、スマートフォンの通知を受け取る頻度が1日50回以上のユーザーは、ストレスレベルが通常の2倍に達することが確認されました。特にニュースアプリの通知が多いほど、ストレスホルモンの分泌が増え、ドゥームスクローリングの頻度が高まる傾向にあります。

ドゥームスクローリングが日常生活にもたらす影響

ドゥームスクローリングの影響は、精神面だけでなく、私たちの日常生活全般に及びます。

例として、睡眠への影響が挙げられます。2020年のアメリカ睡眠医学会(AASM)の調査によると、寝る前にスマートフォンを使用し、ニュースやSNSをチェックする人の約78%が睡眠の質の低下を経験しているという結果が出ています。特に、ブルーライトによるメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌抑制と、ネガティブな情報によるストレスの増加が、入眠の妨げになっています。

また、職場での生産性低下も問題です。ドゥームスクローリングにより、仕事中にスマートフォンをチェックする回数が増え、集中力が続かなくなります。2017年にミシガン大学が発表した研究では、仕事中にSNSを1回でもチェックした従業員は、チェックしなかった従業員に比べて作業効率が平均で22%低下することが示されています。短時間のニュースチェックが長時間のスクロールに変わることで、業務への集中が大幅に損なわれることが分かっています。

さらに、人間関係にも影響を与えます。家族や友人と過ごす時間よりもスマートフォンの画面を見る時間が長くなり、コミュニケーションの質が低下します。2019年にオックスフォード大学が発表した研究では、食事中にスマートフォンを使用する時間が増えると、家族間の会話の回数が最大35%減少するという結果が出ています。このように、ドゥームスクローリングは私たちの生活のあらゆる面に悪影響を及ぼしています。

結局、ドゥームスクローリングは誰のものなのか?

私たちは自分の意思でニュースを見ているつもりでも、実際には脳のバイアスやSNSのアルゴリズムに影響を受け、無意識のうちにドゥームスクローリングのループに陥っています。ネガティブな情報に引き寄せられるのは、人間の進化の過程で生まれた本能であり、SNSやニュースアプリの仕組みによってそれがさらに強化されています。

この現象が続くと、私たちは時間を奪われ、ストレスを増やし、判断力を低下させてしまいます。結局、ドゥームスクローリングは私たち自身のものであるはずなのに、私たちがコントロールしているわけではありません。この矛盾を認識することこそが、情報に振り回されず、自分の時間と注意を守るための第一歩かもしれません。