人工甘味料は、砂糖の代わりとして多くの食品や飲料に使われています。「低カロリー」「糖質ゼロ」「ダイエットに適している」といった理由から、特に人気があります。最近では、糖尿病や肥満といった生活習慣病が増えているため、砂糖の過剰摂取が健康に良くないことが広く知られるようになりました。そのため、人工甘味料への需要が高まっています。スーパーやコンビニでは、「ノンシュガー」や「カロリーオフ」と書かれた商品がたくさん並び、多くの人が健康的な選択肢としてこれらを選んでいます。
しかし、人工甘味料は本当に安全なのでしょうか?これまで人工甘味料は「カロリーが低く、血糖値にほとんど影響を与えない」と考えられていましたが、最近の研究では、人工甘味料が耐糖能異常(糖の代謝異常)を引き起こし、結果的に糖尿病のリスクを高める可能性があることが指摘されています。また、腸内細菌のバランスを崩し、体全体の代謝に悪影響を与える可能性も示されています。これにより、従来の「安全」という考えに疑問が投げかけられています。
人工甘味料を摂取したマウスの実験では、全てのマウスに耐糖能異常が見られました。これは、人工甘味料が単に「砂糖の代わり」として機能するのではなく、体の代謝に予想外の影響を与える可能性があることを示しています。また、人を対象とした研究では、人工甘味料を常に摂取する人々が、そうでない人々よりも糖尿病や肥満のリスクが高いことが報告されています。この結果は、実験室での研究結果とも一致しています。
本記事では、人工甘味料が人体に与える影響について、最新の研究結果を基に解説します。特に、①耐糖能異常との関係、②腸内細菌への影響、③心血管疾患リスクとの関連について見ていきます。人工甘味料の使用について理解を深め、適切な選択をするための知識を提供することが本記事の目的です。
人工甘味料が引き起こす耐糖能異常の研究

人工甘味料は、砂糖の代わりに広く使われていますが、最近の研究によって、これらの甘味料が耐糖能異常を引き起こし、糖尿病のリスクを高める可能性があることがわかってきました。
マウスを使った人工甘味料の研究
イスラエルのワイツマン科学研究所の研究では、マウスにサッカリン、スクラロース、アスパルテームといった人工甘味料を11週間与えたところ、耐糖能異常が見られたという報告があります。さらに、人工甘味料を摂取したマウスの腸内細菌を無菌マウスに移植した結果、移植されたマウスも耐糖能異常を示しました。これにより、腸内細菌の変化が耐糖能異常の原因である可能性が示唆されています。
ヒトを対象とした研究
フランスで行われた大規模なコホート研究では、約10万人を対象に人工甘味料の摂取と糖尿病の発症リスクについて調査されました。その結果、人工甘味料を多く摂取するグループでは、糖尿病の発症リスクが69%も高くなることが明らかになりました。
また、日本人男性を対象とした追跡調査でも、人工甘味料を含むソフトドリンクを週に1カップ(237ml)以上飲む人は、全く摂取しない人と比べて糖尿病の発症リスクが1.7倍高いことが報告されています。
人工甘味料が腸内細菌に与える影響

人工甘味料は砂糖の代わりに広く使われていますが、最近の研究により、これらの甘味料が腸内細菌に影響を与え、耐糖能異常や糖尿病のリスクを高める可能性があることがわかってきました。
腸内細菌への影響
人工甘味料を摂取すると、腸内の細菌のバランスが変わることが報告されています。例を挙げると、サッカリンを摂取したマウスの腸内細菌のバランスが変化し、耐糖能異常が生じたことが示されています。さらに、サッカリンを摂取したマウスの腸内細菌を無菌マウスに移植すると、移植されたマウスも耐糖能異常を示したことから、腸内細菌の変化が耐糖能異常の原因である可能性が高いと考えられています。
また、人工甘味料が腸内細菌のバイオフィルム形成能力を高め、腸の内壁と微生物の相互作用に悪影響を与えることが発見されています。実際の例として、人工甘味料の摂取が腸内細菌のバイオフィルム形成を促進し、これが腸内環境の悪化や代謝異常の一因となる可能性が示唆されています。
ヒトにおける人工甘味料の影響
人を対象とした研究でも、人工甘味料の摂取が腸内細菌に影響を与える可能性が示されています。例として、人工甘味料を多く摂取する人々は、腸内細菌の多様性が低下し、特定の細菌の割合が変化することが報告されています。これらの変化は、耐糖能異常や糖尿病のリスク増加と関連している可能性があります。
さらに、人工甘味料の摂取が腸内細菌を変化させ、食の好みや食習慣に影響を与える可能性も指摘されています。実際の例として、人工甘味料を含む飲料を日常的に摂取することで、腸内細菌が変わり、甘い食品や飲料を好むようになる可能性があるとされています。
耐糖能異常との関連
人工甘味料の摂取による腸内細菌の変化が、耐糖能異常や糖尿病のリスク増加と関連している可能性があります。前述の研究では、人工甘味料を摂取したマウスや人の腸内細菌が変化し、これが耐糖能異常の発症に寄与していることが示唆されています。実際の例として、腸内細菌の変化がエネルギーの吸収を増加させ、短鎖脂肪酸の産生を増やし、これが耐糖能異常を引き起こす可能性があります。
また、人工甘味料の摂取が腸内細菌を通じてインスリン抵抗性を高め、結果的に糖尿病のリスクを増加させる可能性も報告されています。これらの知見は、人工甘味料の摂取が腸内細菌に変化をもたらし、それが代謝異常や糖尿病のリスクを高める可能性を示唆しています。
総じて、人工甘味料の摂取が腸内細菌のバランスを変え、耐糖能異常や糖尿病のリスクを高める可能性があることが示されています。これらの研究結果は、人工甘味料の安全性や健康への影響について再考する必要性を示しています。人工甘味料の摂取を控え、腸内細菌のバランスを保つためには、食物繊維を豊富に含む野菜や発酵食品を積極的に摂取することが推奨されます。
人工甘味料が心臓や血管に与える影響

人工甘味料は砂糖の代わりに広く使われていますが、最近の研究によって、これらの甘味料が心血管疾患、つまり心臓や血管に関する病気のリスクを高める可能性があることがわかっています。
人工甘味料が心血管疾患リスクに与える影響
フランスの大規模な前向き研究「NutriNet-Santé」では、10万3,388人の参加者を対象に、人工甘味料の摂取量と心血管疾患のリスクとの関連性が調査されました。その結果、人工甘味料の摂取量が増えるほど、心血管疾患のリスクが有意に上昇することがわかりました。人工甘味料を多く摂取する人の場合は、摂取しない人と比べて心血管疾患のリスクが9%増加しました(ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:1.01~1.18、p=0.03)。また、脳血管疾患ではリスクが18%増加することが示されています(HR:1.18、95%CI:1.06~1.31、p=0.002)。さらに、アスパルテームの摂取は脳血管疾患のリスクを17%上昇させることがわかりました(HR:1.17、95%CI:1.03~1.33、p=0.02)。
エリスリトールの摂取と血栓リスク
別の研究では、カロリーゼロの甘味料として広く使われているエリスリトールが、血栓形成のリスクを高める可能性が報告されています。アメリカのクリーブランドクリニックの研究では、エリスリトールを摂取した健康な成人20人を対象に調査が行われ、エリスリトール摂取後に血中のエリスリトール濃度が上昇し、血小板の活性化が促進され、血栓形成のリスクが2倍以上に増加することが示されました。
アスパルテームの摂取と動脈硬化
スウェーデンのカロリンスカ研究所と山東大学の共同研究では、アスパルテームの摂取が動脈硬化を促進し、心臓発作や脳卒中のリスクを高める可能性が示されています。この研究では、マウスにアスパルテームを12週間与えたところ、動脈に脂肪性プラークが蓄積し、炎症が増加したことが報告されています。実際の例として、アスパルテームを摂取したマウスでは、動脈のプラーク面積が対照群と比べて約2倍に増加し、炎症マーカーであるCX3CL1の発現も顕著に上昇しました。
人工甘味料と高血圧リスク
世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、人工甘味料の長期使用が高血圧のリスクを13%増加させる可能性が指摘されています。この勧告は、複数の高品質な研究を総合的に分析した結果に基づいており、人工甘味料の摂取が血圧上昇と関連していることが示唆されています。
これらの研究結果は、人工甘味料の摂取が心血管疾患のリスク増加と関連している可能性を示しています。特に、アスパルテームやエリスリトールなどの人工甘味料は、動脈硬化、血栓形成、高血圧などのリスクを高める可能性があるため、摂取量や頻度には注意が必要です。
人工甘味料が健康に与えるリスク

人工甘味料はカロリーがゼロまたは低カロリーであるため、肥満や糖尿病の予防に使われることが多いです。しかし、最近の研究では、人工甘味料の摂取が耐糖能異常や腸内細菌のバランス変化、そして心血管疾患のリスクを高める可能性があることがわかっています。これらの研究結果は、人工甘味料が「無害」や「健康的な代替品」とされてきた従来の考えに疑問を投げかけています。
耐糖能異常と糖尿病リスクの増加
人工甘味料の摂取が耐糖能異常を引き起こし、それが糖尿病リスクを高める可能性があることが明らかになっています。イスラエルのワイツマン科学研究所の研究では、サッカリン、スクラロース、アスパルテームを摂取したマウスが11週間後に耐糖能異常を示したと報告されています。さらに、これらのマウスの腸内細菌を無菌マウスに移植したところ、移植されたマウスにも同様の耐糖能異常が確認されました。これは、人工甘味料が直接血糖値を上昇させるのではなく、腸内細菌の変化を介して代謝異常を引き起こす可能性を示しています。
また、フランスで行われた約10万人を対象とした研究では、人工甘味料の摂取量が多い人々で糖尿病の発症リスクが69%高まることが示されています。これらの研究結果は、人工甘味料が糖尿病予防に効果的であるどころか、逆にリスクを高める可能性があることを示唆しています。
腸内細菌の変化が健康に与える影響
人工甘味料の摂取は腸内細菌のバランスを変え、それが耐糖能異常だけでなく全身の健康にも影響を与える可能性があります。ワイツマン科学研究所の研究では、サッカリンを摂取したマウスの腸内細菌が変化し、特定の細菌が増加したことが観察されました。これらの細菌は短鎖脂肪酸の生成量を変化させ、インスリン抵抗性を悪化させることが知られています。
また、人を対象とした研究でも、スクラロースやアスパルテームが腸内の有益な細菌を減少させ、悪玉菌の割合を増やすことが確認されています。腸内細菌のバランスが崩れると、免疫機能の低下や慢性炎症の増加、さらには精神的健康の悪化(うつ症状や不安の増加)と関連する可能性があると報告されています。
人工甘味料の高摂取と心血管疾患リスク
人工甘味料と心血管疾患のリスクについても多くの研究が警告を発しています。フランスのNutriNet-Santé研究では、10万人を対象に調査した結果、人工甘味料の高摂取者は心血管疾患のリスクが9%上昇し、特に脳血管疾患のリスクが18%増加することが明らかになりました。また、アスパルテームの摂取は脳血管疾患リスクを17%高めることも報告されています。
さらに、エリスリトールに関する研究では、摂取後に血栓形成リスクが2倍以上に増加することが確認されています。血栓の形成は心筋梗塞や脳卒中の直接的な要因となるため、この研究結果は重要です。
また、高血圧リスクとの関連性も示唆されています。世界保健機関(WHO)のガイドラインでは、人工甘味料の長期摂取が高血圧リスクを13%増加させる可能性があると報告されています。高血圧は動脈硬化を引き起こし、心臓病や脳卒中の主要な危険因子となるため、人工甘味料の摂取について慎重に考える必要があります。
人工甘味料の「安全性」の見直しが必要
これらの研究結果から明らかになっているのは、人工甘味料の摂取が単に「砂糖の代替品」として考えられるべきではないということです。かつては「カロリーゼロで安全」とされていた人工甘味料ですが、耐糖能異常、腸内細菌の変化、心血管疾患リスクの増加など、いくつかの健康リスクと関連していることが明らかになりつつあります。
人工甘味料を含む食品や飲料は広く流通しており、多くの人が日常的に摂取しています。しかし、これらの研究結果が示すように、人工甘味料の健康リスクを十分に理解し、過剰な摂取を控えることが重要です。特に、糖尿病や高血圧、心血管疾患のリスクが高い人は、人工甘味料の選択に注意が必要です。
今後も人工甘味料に関する研究は続くと考えられますが、現在の科学的証拠に基づいて、人工甘味料が健康に与える影響について再考する価値があると言えます。