卵は、日本の食卓で朝食の定番として、また料理の主役や隠し味として欠かせない食材です。しかし、皆さんは卵を選ぶときにどのような基準を持っていますか?価格やブランド、あるいは栄養価などでしょうか?
最近、卵の価格が上がってきており、その影響で「安さ」を重視する人が増えているようです。同じように見える卵なら、安いものを選びたくなるのも理解できます。しかし、スーパーには「平飼い」「オーガニック」「オメガ3強化」など、さまざまな種類の卵が並んでおり、それぞれに違いがあります。例を挙げると、放し飼いで育てられた鶏の卵は、一般的なケージ飼いの卵よりも栄養価が高いとされますが、その価格は2倍以上になることもあります。では、高価な卵には本当にその価値があるのでしょうか?
また、「卵はコレステロールが多いから控えたほうがいい」と考える人もいるかもしれません。しかし、最近の研究では、卵を食べることが健康に悪影響を及ぼすわけではないという結果が出ています。それでも、毎日食べることに不安を感じる人も多いのではないでしょうか?
卵は手軽に栄養を摂れる便利な食品ですが、その選び方次第で私たちの健康や食生活に影響を与えます。では、私たちはどのように卵を選べばよいのでしょうか?
鶏の品種によって異なる卵の殻の色

卵の殻の色は、主に鶏の遺伝的特性によって決まります。日本のスーパーでよく見かける白い卵は「白色レグホン(White Leghorn)」という品種の鶏が産むことが多く、茶色い卵は「ロードアイランドレッド(Rhode Island Red)」や「ボリスブラウン(Boris Brown)」といった品種が産むことが知られています。これは、鶏の遺伝情報に、どの色素を卵殻に含ませるかという指示が含まれているためです。
殻の色を決める色素の違い
卵の殻の色を決定するのは、主に「プロトポルフィリンIX(Protoporphyrin IX)」と「ビリベルジン(Biliverdin)」という2種類の色素です。
- プロトポルフィリンIX
- 赤褐色の色素で、茶色い卵の殻に多く含まれています。これは主に、ロードアイランドレッドなどの赤色鶏の卵の殻に分布しており、産卵の最終段階で殻に沈着するため、白い卵と異なる色になります。
- ビリベルジン
- 青緑色の色素で、アローカナという品種の鶏が産む青い卵に多く含まれています。ビリベルジンは殻全体に染み込むため、内側も青みがかるのが特徴です。白色レグホンが産む白い卵は、これらの色素がほとんど含まれていないため、純白の殻になります。
一方で、ロードアイランドレッドやボリスブラウンの卵の殻にはプロトポルフィリンIXが沈着し、茶色くなります。
品種による違いと卵の生産効率
卵の殻の色は遺伝的な要素によって決まりますが、飼料の種類や環境によっては変わりません。ただし、鶏の品種によって産卵数や卵のサイズ、卵質に差が生じることがあります。
品種 | 殻の色 | 産卵数(年間) | 1個の卵の重さ(g) |
---|---|---|---|
白色レグホン | 白 | 約300~320個 | 約55~65g |
ロードアイランドレッド | 茶 | 約250~280個 | 約60~70g |
アローカナ | 青 | 約180~200個 | 約50~60g |
白色レグホンは年間300個以上の卵を産む高産卵種で、飼料効率が良く、卵の価格が比較的安価になります。一方、ロードアイランドレッドは卵の生産量が少し低いため、茶色い卵の方が市場価格が高くなる傾向があります。
卵の殻の厚みと色の関係
「茶色い卵の方が殻が硬い」と感じる人もいますが、卵の殻の厚みは品種よりも鶏の年齢や栄養状態による影響が大きいです。
- 若い鶏が産む卵の方が殻が厚い
鶏は若い時ほど殻の形成がしっかりしており、年齢が上がると殻が薄くなる傾向があります。特に産卵開始から1年以内の鶏の卵は、殻が厚くなりやすいです。 - カルシウムの摂取量が影響する
鶏の飼料にはカルシウムが含まれていますが、カルシウム摂取量が不足すると殻が薄くなります。特に高齢の鶏はカルシウムの吸収効率が落ちるため、殻が薄くなることが多いです。
このため、「茶色い卵の方が白い卵よりも殻が硬い」と感じる場合、それは鶏の年齢や飼料の違いによるものであり、殻の色そのものが影響しているわけではありません。
総じて、卵の殻の色は鶏の品種と遺伝によって決まります。色素の違いが殻の色を決めますが、栄養価や味には影響しません。殻の厚みや強度は鶏の年齢や栄養状態による影響が大きく、色の違いが品質の差を意味するわけではありません。卵を選ぶ際は、殻の色よりも鶏の飼育環境や産卵時期、栄養価の違いに注目することが重要です。
殻の色と卵の栄養価の関係

「茶色い卵のほうが白い卵より栄養価が高い」と考えている人は多いですが、科学的には殻の色と栄養価に直接的な関係はありません。同じ環境と飼料で育てられた鶏が産む卵の場合、栄養成分はほぼ同じになります。
主要な栄養成分の比較
卵は優れた栄養食品で知られていますが、白い卵と茶色い卵の栄養成分を比較すると、以下のようになります。
栄養成分 | 白い卵(100gあたり) | 茶色い卵(100gあたり) |
---|---|---|
エネルギー | 約151 kcal | 約152 kcal |
タンパク質 | 約12.3 g | 約12.4 g |
脂質 | 約10.3 g | 約10.2 g |
炭水化物 | 約0.7 g | 約0.7 g |
ビタミンA | 約140 µg | 約141 µg |
ビタミンD | 約2.0 µg | 約2.1 µg |
カルシウム | 約55 mg | 約56 mg |
鉄 | 約1.8 mg | 約1.9 mg |
上記のデータからわかるように、白い卵と茶色い卵の栄養価にはほとんど差がありません。色の違いだけで、基本的な栄養価は同等であることが確認できます。
栄養価を決める要因は殻の色ではない
卵の栄養価を決める最大の要因は、鶏の飼料と飼育環境です。たとえば、飼料にオメガ3脂肪酸が豊富な亜麻仁や魚粉を加えると、その鶏が産む卵のオメガ3脂肪酸の含有量が増加します。また、放し飼いやオーガニックな環境で育てられた鶏の卵は、栄養価が高い傾向にあります。
実際の研究によれば、放し飼いで育った鶏の卵は、工場型養鶏場の卵と比較して以下のような違いがあることが示されています。
栄養成分 | 放し飼い卵(100gあたり) | 一般的な養鶏場の卵(100gあたり) |
---|---|---|
オメガ3脂肪酸 | 約200 mg | 約60 mg |
ビタミンD | 約3.0 µg | 約2.0 µg |
ビタミンE | 約1.2 mg | 約0.6 mg |
このように、栄養価の違いは飼育方法や飼料の種類によって生じるものであり、殻の色には影響されません。
よくある誤解の原因
「茶色い卵の方が栄養価が高い」と思われがちな理由はいくつかあります。
- 価格の違いが影響している
一般的に、茶色い卵は高価で販売されることが多いため、「高い=栄養価が高い」と考える人がいます。しかし、茶色い卵が高価なのは、飼料消費量が多い品種の鶏が産むことや、特定のブランド戦略が関係しているためであり、栄養価が高いからではありません。 - 見た目による印象
茶色い卵は自然な風合いがあり、白い卵よりも「健康的で栄養価が高そう」という印象を与えることがあります。しかし、実際には色素の違いだけで、栄養価に影響を与えるものではありません。 - 特定のブランド卵の影響
高級ブランド卵の中には、栄養価を高めるために特別な飼料を使用しているものがあります。これらの卵の多くは茶色い卵であるため、「茶色い卵=栄養価が高い」という誤解が広がった可能性があります。しかし、同じような飼料を与えれば、白い卵でも同じ栄養価を持つことができます。
総じて、茶色い卵と白い卵の栄養価に大きな違いはありません。栄養価を決めるのは飼料と飼育環境であり、殻の色そのものには影響を与える要素がないことが科学的に証明されています。卵を選ぶ際には、殻の色ではなく、飼育方法や飼料の質に注目することが重要です。
茶色い卵が高価な理由

スーパーや市場で卵を見かけると、一般的に茶色い卵の方が白い卵よりも価格が高いことが多いです。この価格差には、鶏の品種の違いや飼料のコスト、生産効率、消費者の需要など、いくつかの要因が関係しています。
① 茶色い卵を産む鶏の飼育コストが高い
茶色い卵を産む鶏は、一般的に白い卵を産む鶏よりも体が大きく、より多くのエネルギーを必要とします。代表的な品種である「ロードアイランドレッド」や「ボリスブラウン」は、白い卵を産む「白色レグホン」と比較して体重が重く、飼料の消費量が多くなります。
品種ごとの飼料消費量の比較(1日あたり)
品種 | 体重(成鶏) | 飼料消費量(g/日) |
---|---|---|
白色レグホン(白卵) | 約1.5 kg | 約110 g |
ロードアイランドレッド(茶卵) | 約2.2 kg | 約130 g |
ボリスブラウン(茶卵) | 約2.0 kg | 約125 g |
茶色い卵を産む鶏は、1日に約15~20%多くの飼料を必要とするため、飼育コストが上昇します。飼料費は卵の生産コストの約60~70%を占めるため、この差が価格に反映されます。
② 産卵数が少なく、効率が低い
白色レグホンは産卵効率が高く、年間約300~320個の卵を産むのに対し、茶色い卵を産む鶏は約250~280個程度しか産卵しません。この産卵数の違いは、1羽あたりの生産性に影響を与え、結果的に茶色い卵の価格が上がる要因となります。
品種ごとの年間産卵数と生産効率
品種 | 年間産卵数 | 飼料1kgあたりの卵の数 |
---|---|---|
白色レグホン(白卵) | 約310個 | 約9個 |
ロードアイランドレッド(茶卵) | 約260個 | 約7.5個 |
ボリスブラウン(茶卵) | 約270個 | 約8個 |
飼料1kgあたりに換算すると、白色レグホンの方が茶卵品種よりも約15~20%多くの卵を産むことができるため、より低コストで卵を生産できます。
③ 飼育環境の違い
茶色い卵は、白い卵よりも放し飼いや平飼いなどの飼育環境で生産されることが多く、これが価格の差に影響しています。一般的に、ケージ飼い(バタリーケージ)よりも平飼い(フリーレンジ)や放し飼い(オーガニック養鶏)の方が、飼育スペースが必要になり、コストがかかります。
飼育方法ごとのコスト比較
飼育方法 | 1羽あたりのスペース | 飼料消費量 | 生産コスト |
---|---|---|---|
バタリーケージ(主に白卵) | 約400㎠ | 標準 | 低 |
平飼い(主に茶卵) | 約800㎠~1,000㎠ | やや多い | 中 |
放し飼い(オーガニック) | 4㎡以上 | 多い | 高 |
放し飼いや平飼いでは、鶏が自由に動き回れるため、エネルギー消費が増え、結果的に多くの飼料を必要とします。また、ストレスの少ない環境で飼育されることで産卵数が若干減少する傾向もあり、それがコスト増加につながります。
④ 消費者の需要とブランド戦略
茶色い卵は「自然で健康的」「栄養価が高い」といったイメージを持たれやすく、これが消費者の需要につながっています。多くの高級卵ブランドは茶色い殻を持つ品種の卵を採用し、オーガニックや平飼いと組み合わせることで、より高価格で販売する戦略を取っています。
オーガニック卵や特別飼育卵は、通常の卵よりも1.5~2倍の価格で販売されることが多く、これにより「茶色い卵=高級」というイメージが強化されます。
市場価格の比較(1パック10個入り)
卵の種類 | 平均価格(円) |
---|---|
一般的な白卵(ケージ飼い) | 約200円 |
一般的な茶卵(ケージ飼い) | 約250円 |
平飼い茶卵 | 約300~400円 |
放し飼い・オーガニック茶卵 | 約500~800円 |
茶色い卵の中でも、高級ブランド卵は価格が大幅に上昇することがわかります。この価格差が、「茶色い卵は高い」という認識を消費者に与える一因となっています。
茶色い卵の価格が高い理由
茶色い卵の価格が高い理由は、主に以下の4つの要因に集約されます。
- 鶏の品種の違い
- 茶色い卵を産む鶏は体が大きく、白い卵を産む鶏よりも多くの飼料を必要とするため、コストが高くなります。
- 産卵効率の違い
- 茶色い卵を産む鶏の産卵数は白い卵を産む鶏よりも少なく、1個あたりの生産コストが高くなります。
- 飼育環境の影響
- 茶色い卵は放し飼いや平飼いで生産されることが多く、ケージ飼いの白い卵よりも生産コストがかかります。
- 消費者の需要とブランド戦略
- 茶色い卵は「健康的」「高級」というイメージがあり、特にオーガニックや平飼いの卵は高価格帯で販売されます。
このように、茶色い卵の価格が高いのは単なる殻の色の違いではなく、鶏の品種や飼育コスト、消費者の価値観などさまざまな要因が影響しています。
卵の選び方と健康への影響

卵は栄養価が高く、さまざまな料理に使われる便利な食品です。しかし、スーパーには多くの種類の卵があり、殻の色や飼育方法、栄養強化の有無によって価格や品質が異なります。どの卵を選ぶべきかを理解するために、それぞれの要素が健康に与える影響を見ていきます。
① 飼育方法による栄養価の違い
卵の栄養価は、鶏の飼育環境によって変わります。特に、ケージ飼い(バタリーケージ)、平飼い(フリーレンジ)、放し飼い(オーガニック)の違いは、卵の栄養成分に影響を与える重要な要素です。
飼育方法ごとの栄養成分比較(100gあたり)
飼育方法 | ビタミンD(µg) | オメガ3脂肪酸(mg) | β-カロテン(µg) |
---|---|---|---|
ケージ飼い | 1.5~2.0 | 50~80 | 10~20 |
平飼い | 2.0~3.0 | 100~150 | 30~50 |
放し飼い(オーガニック) | 3.0~4.0 | 200~300 | 60~90 |
放し飼いの鶏は日光を浴びる機会が多く、卵のビタミンD含有量が増加します。また、自然の植物や昆虫を食べることで、オメガ3脂肪酸やβ-カロテンなどの栄養価も高まります。
② 飼料の違いが栄養価に及ぼす影響
鶏の食事は卵の栄養に影響を与えます。特にオメガ3脂肪酸強化卵、ヨウ素強化卵、ビタミンE強化卵などの栄養強化卵があります。
飼料成分が卵の栄養価に与える影響
飼料の種類 | 栄養成分の影響 |
---|---|
亜麻仁や魚粉 | オメガ3脂肪酸が増加(約3~5倍) |
トウモロコシ主体 | β-カロテンが増加し黄身が濃くなる |
ビタミンE添加 | 卵黄のビタミンE含有量が増加 |
ヨウ素強化飼料 | 卵のヨウ素含有量が2~3倍に |
オメガ3脂肪酸が豊富な卵を摂取すると、血液中の中性脂肪を減少させ、心血管疾患のリスクを低減する効果があります。また、ビタミンEが多い卵は抗酸化作用が強く、細胞の老化を防ぐ効果が期待できます。
③ 殻の色は健康に影響を与えるのか
白い卵と茶色い卵の栄養価にはほぼ違いがありません。しかし、「茶色い卵のほうが健康に良い」という誤解が広まっています。
実際の研究では、白い卵と茶色い卵の栄養成分の差は1~2%以内であり、実質的な違いはありません。殻の色は鶏の品種によって決まるだけで、健康への影響はないのです。
④ 新鮮な卵の選び方
卵の鮮度は、保存期間や調理の安全性に大きく関わるため、購入時にしっかり確認する必要があります。
卵の鮮度を判断する方法
- 賞味期限を確認
- 一般的な市販の卵は採卵日から2週間程度が賞味期限です。加熱調理する場合は、賞味期限を超えても1週間程度は安全に食べられます。
- 水に浮かべるテスト
- 新鮮な卵は沈む。古い卵は浮く(内部の気室が大きくなるため)。
- 割って黄身の盛り上がりを確認
- 新鮮な卵は黄身がこんもりと盛り上がり、白身がしっかりまとまります。古い卵は白身が広がりやすいです。
卵は冷蔵保存が基本であり、10℃以下で保存することで鮮度を保ちやすくなります。
⑤ 卵の摂取量がもたらす健康への影響
卵はコレステロールが多い食品として知られていますが、近年の研究では食事からのコレステロール摂取が血中コレステロール値に大きく影響しないことが分かっています。
卵の摂取と健康リスクの研究結果
研究 | 対象者 | 結果 |
---|---|---|
ハーバード大学(2019年) | 21万人以上 | 1日1個の卵摂取で心疾患リスクに変化なし |
日本の研究(2020年) | 約9万人 | 卵を1日2個以上食べても健康リスクに影響なし |
卵のタンパク質やビタミンB群が筋肉の維持や認知機能の向上に役立つという研究結果もあります。
⑥ 健康面から卵の選択基準
卵を選ぶ際には、以下の点を重視すると健康的な選択が可能になります。
- 飼育環境を考慮する
- 平飼いや放し飼いの卵は栄養価が高いです。
- 飼料に注目する
- オメガ3やビタミンE強化卵は健康維持に有益です。
- 新鮮な卵を選ぶ
- 賞味期限や保存方法を確認し、水に浮かべるテストなどでチェックします。
- 殻の色に惑わされない
- 茶色い卵と白い卵の栄養価に違いはありません。
- 摂取量を気にしすぎない
- 適量の卵は健康に良い影響を与えます。
卵は栄養価が高く、健康に良い食品ですが、選び方によってその価値はさらに向上します。殻の色ではなく、飼育環境や栄養強化の有無を意識することで、より健康的な食生活を送ることができます。